愛艶婚~お見合い夫婦は営まない~
「ちょっと失礼します!」
ハッとして、彼の額に手を当てる。触れた肌は予想通り、じわりと熱い。
「やっぱり……熱ありますね!?」
「ない」
たずねるけれど、清貴さんは迷わず否定する。まっすぐな目で言われたって額は熱い。
「ある!」
「ないって言ってるだろ」
「あるったらあります!ないって言うなら熱計ってください」
認めない清貴さんに、私はリビングのチェストから体温計を取り出すと、ずいっと目の前に差し出す。
それを見て彼は受け取ることはなく、バツが悪そうに席を立った。
「大したことじゃない。これくらい平気だ」
「でもっ……」
けれどやはり調子が悪くうまく力が入らないようで、よろけて転倒してしまった。
「キャー!大丈夫ですか!?」
「大丈夫だから、大声を出すな……」
これ以上歩かせるのは危険だ。とりあえず部屋に連れて行こう……!
そう判断し、私は清貴さんの体を支え立たせる。
自分より頭ひとつ以上背の高い彼を半ば引きずるようにしながら、二階へ上がり奥の寝室へと入った。
大きなベッドとデスクが置かれた彼の部屋。
私の部屋より少し広いだろうか、まじまじと見る余裕もなく彼の体をベッドにおろす。
そしてスーツのジャケットを脱がせて体温をはかると、表示されたのは39.2という高い数字だった。