愛艶婚~お見合い夫婦は営まない~
4.恋と願いはよくせよ
いつの間にか6月になり、数日続いた雨があがったある日の朝。
いつも通り早くに起きた私は、朝ごはんを作り終えてからお弁当作りに勤しんでいた。
黒いお弁当箱に、だし巻き玉子やアスパラガスのベーコン巻きなど彩りのいいおかずを詰め込んでいく。
「おはよう、春生」
「清貴さん。おはようございます」
起きてきた清貴さんは、いつも通り。
スリーピースのスーツに髪を整え、ネクタイもきっちりと締めている。
顔色も健康的で、咳のひとつも出ていない。
「風邪、すっかり治りましたね」
「あぁ。迷惑かけたな」
清貴さんが熱を出して寝込んでから数日。
高熱は翌日には下がったけれど、微熱が続いたり少し咳が続いたりとなかなか治りきるには時間がかかった。
けれどその様子からもうすっかり大丈夫なようで、安堵する私を横目に彼はダイニングの席に着いた。
「清貴さんが元気になるように愛と念を込めて、お弁当のごはんにハート書いておきましたからね!」
「それはやめてくれ」
お弁当箱に詰めたごはんにおかかでハートを描いたものを見せる私に、清貴さんは心底嫌そうに顔を歪めた。
こんな時ばかり表情に出さなくても。
ぶーとふてくされ、ハートを隠すように上に海苔をのせていると、清貴さんは朝食を食べ始めながら言う。