愛艶婚~お見合い夫婦は営まない~
それからお参りや付近の散歩を済ませた私たちは、車で町へ出てランチを済ませると、有名なガラスの美術館や水族館をまわり、のんびりと一日を過ごした。
あっという間に夜になり芦ノ湖のほうへ戻ってくると、「最後にこれに乗ろう」という清貴さんの提案で遊覧船に乗ることにした。
もう日も落ち、辺りは暗く昼間と打って変わって観光客もいない。
そんな中で、湖に浮かぶライトアップされな大きな遊覧船だけが煌々とかがやいていた。
「わぁ、大きな船」
係員に誘導され、二階建ての船内へと入る。
デッキに向かうべく一階の船内を通るけれど、船内には自分たち以外の人の姿は見えない。
「他のお客さんもいないなんて、まるで貸切みたいですね」
「みたい、というか貸し切りだ」
「え!?貸し切り!?」
予想外の答えに驚き清貴さんを見るけれど、彼は笑うことなく冗談を言っている様子もない。
「この遊覧船は通常だと夕方には終わってしまうからな。今朝春生から『箱根をまわりたい』と言われた時点で連絡して、特別に出してもらったんだ」
「さ、さすが清貴さん……」
名護グループの御曹司となれば、顔もきくのだろう。
だからって貸し切り……いいんだろうか。
気が引けてしまいながらも、動き出す船内を抜けて屋外デッキへと出る。
するとそこには、ぐるりと木々に囲まれる中辺り一面湖が広がっていた。
船の明かりが水面に映り、進むたび揺れて綺麗だ。
ふと視線を上げて空を見ると、必要以上の明かりがない真っ暗な夜空には無数の星が浮かんでいるのが見える。