愛艶婚~お見合い夫婦は営まない~



「ん、おいしいです」

「あぁ。炭酸も強くなくて飲みやすいな」



こうしてみてもシャンパングラスがよく似合う。まるで映画のワンシーンのようだ。

つい見とれていると、なにげなくこちらを見た彼と目が合った。

先ほどの屋外デッキでのことを思い出しドキッとしてしまい、私は目をそらしながらあわてて話を切り出す。



「そっそういえば、昼間神社でなにお願いしてたか聞いてもいいですか?」



振った話題は、最初に行った神社でのこと。

手を合わせる彼の願い事がどんなものなのかが気になっていた。



「いいけど、聞いてもつまらないぞ。普通に、会社の繁栄と家族や社員の健康のことくらいだ」



さすが、清貴さんらしい願い事。

副社長として、社員のことまで考えるのが彼らしいと思った。


目の前のお皿のブルスケッタをナイフで切り、口に運びながら話を続ける。



「名護リゾートを継ぐっていうのは、昔から決まってたんですか?」

「あぁ。兄弟もいないし、俺が生まれた時点で将来は決まっていたようなもので、他に選択肢もなかった」

「へぇ、でもそれに対して不満や反発とかなかったんですか?」

「特にはなかったな。そのための勉強も嫌じゃなかったし、経営者としての父の姿もかっこよくて憧れた。……それに、昔人と約束したんだ。立派な社長になる、って」



すごいなぁ。周囲の期待に応えて、人との約束を果たすべく頑張っていて。

……私とは、違う。


  
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