愛艶婚~お見合い夫婦は営まない~
「それから、冬子さんたちは私のことも本当の娘みたいに育ててくれて。本気で叱られたり褒めてくれたり、沢山の愛情をくれたんです」
悪いことや間違ったことをすれば泣くほど叱られて、いいことや正しいことをしたときには親バカってくらい褒めてくれた。
そんな冬子さんたちといたから、両親を亡くした悲しみも乗り越えられた。
「冬子さんみたいなあたたかい人になりたい。誰かに愛をあげられるような、そんな人になりたいって思えるんです」
記憶の中の両親と同じくらい、大切で大好きな人たちだから。
「……そんな思いがあるとはいえ、さすがに結婚は嫌じゃなかったか?」
ぼそ、とたずねた清貴さんに、私は迷わず首を横に振る。
「もちろんちょっとは迷いましたけど、でもちょうど仕事も辞めたところで、彼氏もずっといなかったし。そういう運命なのかなって納得できた自分がいました。それに……」
思わず言いかけた言葉に、清貴さんは続きを問うように見つめた。
けれどそれ以上は飲み込んで、話題を変える。
「あ、でもどんな人かわからないのは不安でした。清貴さんと顔合わせしてからも、大丈夫なのかなって」
初めて会ったあの日の、そっけない清貴さんを思い出しながら笑う私に、彼もそれを思い出すように渋い顔をする。
「でも、清貴さんこそ嫌だったんじゃないですか?見ず知らずの相手と結婚だなんて……」
「べつに嫌とは思ってない。世間体を気にする親の気持ちも分かるし、むしろこちらの都合で結婚させてしまった申し訳なさなのほうが強かった」
清貴さんはそう言って、膝の上に置いた私の手をそっととる。
「けど不思議と今は、春生のことをもっと知りたいと思ってる」
「え……?」
私の、ことを?