愛艶婚~お見合い夫婦は営まない~



「清貴さん?どうかしました?」

「……いや、別に」



突然のその態度にどうしたのかと顔を覗き込む。

かすかに見えたその頬と耳は赤く色づいており、握る手も徐々に熱くなっていくのを感じた。



「もしかして……照れてます?」

「うるさい」



赤くなった顔を見られたくないのだろう。頑なに顔を背ける彼がなんだかかわいくて、思わず「ふふっ」と笑ってしまう。



「清貴さん、かわいいです」

「かわいくない。笑うな」



拗ねたように言う清貴さんの姿がよけいおかしくて、さらに「あははっ」と声が出た。

そんな私に、清貴さんはつないでいた手を離して顔を背けたまま黙ってしまう。



あ、もしかして……怒っちゃった?

まずい、いじりすぎてしまったかも。



「き、清貴さん?怒りました?ごめんなさい、あの」



不安になってあわてて彼の顔をのぞきこむ。

慌てた私の声を聞いて、彼は不機嫌そうにした、かと思いきや「ぷっ」と吹き出した。

その声から、清貴さんは怒ったふりをして私をからかっていたのだと気づく。



「もう、からかいましたね!」

「最初にからかったのは春生だろ。仕返しだ」



ぶう、と頬を膨らます私に、こちらを向いた清貴さんはおかしそうに笑う。

そして膨れた頬を指先でつんとつついた。



「かわいいのは、春生のほうだな」



甘い言葉に、今度は私の頬が熱くなる。

けれど不思議と心は穏やかで、彼への愛しさが込み上げた。



見ず知らずの人との結婚は、不安だった。

清貴さんと会ってからも、大丈夫だろうかと思ってた。

だけど今、間違いじゃなかったって感じてる。



結婚相手があなたでよかった。そう思える。





  
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