愛艶婚~お見合い夫婦は営まない~
「ねぇ、名護なんてやめて僕にしない?名護より優しくする自信あるよ」
「な、なにを言ってるんですか!仮にも親友の結婚相手ですよ!?」
「だからこそ余計燃えるよね」
悪気を一切感じさせない笑顔で、とんでもないことをさらっと言ってのける。
神職者がそんなこと言っていいの!?
この人、危険だ……!
今になって清貴さんが言っていた意味に気付いた私は、近付く彼の体を思いきり突き放す。
「ダメです!」
その声は、静かな庭に思いきり響く。
「それに私、優しければ誰でもいいわけじゃないです!清貴さんとだから、近付きたいって思うんです!」
清貴さんより優しくする、なんてそんなことを言われてもこの心は動かない。
ここに来てから、彼の優しさだけじゃなくあたたかさや孤独、強さを知っていっそう近くにいたいと思った。
家族として、妻として、そばにいたいという愛情が芽生えている。
勢いよく言い切った私に、周さんは「ふっ」と嬉しそうに笑みをこぼした。
あ、れ……?その表情の、意味って。
彼の行動の本意を察しかけた、その時だった。
「春生!!」
突然大きな声で名前を呼ばれたと同時に、清貴さんが部屋に勢いよく駆け込んできた。
「き、清貴さん!?」
清貴さんは、周さんと私が並んで座っているのを目にすると、昨夜同様表情を歪める。
そしてこちらへ近付くと私の肩を抱き周さんから引き離した。
そんな清貴さんに、周さんはおかしそうにけらけらと笑った。
「ずいぶん早かったねぇ、『春生ちゃんがうちにきてるよ』ってメールしてまだ10分も経ってないのに。よっぽど急いできたんだ?」
「そりゃあ急ぐだろ……そのメールに『早くこなきゃ奪っちゃうよ』なんて書いてあればな!!」
「あはは、冗談冗談~」
手を叩き心の底から楽しそうに笑う周さんと、それを見ていっそう眉間に深いシワを寄せる清貴さん。
そんなふたりに、さっきまでの場の雰囲気が一変する。