愛艶婚~お見合い夫婦は営まない~
「……だとしても、他の男を褒められて、そのうえ口説かれたと聞くのは不愉快だ」
「あっ、そうですよね!ごめんなさい!」
確かに、清貴さんからすれば気持ちのいい話ではなかったかも。
そもそもは彼の言いつけを守らなかった自分に非がある、と私はあわてて謝った。
けれど清貴さんはふいっと顔を背ける。
「謝っても許さない」
「えぇ!?そんなぁ」
まるで子供みたいな拗ね方……!でも許してもらえないのは困る。
一体どうしたらいいのかと悩む私に、清貴さんは顔を背けたまま言う。
「許してほしいなら、一回止まって目を閉じろ」
「へ?あ、はい!」
意味はわからないけれど、言われるがまま足を止めて目を閉じる。
すると次の瞬間、彼が近づく気配を感じるとほぼ同時に頬にそっと柔らかいものが触れるのを感じた。
え……?
ゆっくりと目を開けると、そこには視界いっぱいが埋まってしまうほど近くに清貴さんがいた。
今、頬にキス……した?
あまりに突然のことに、全身の体温が一気に上昇し顔が熱くなる。
「えっ、今、あのっ」
「耳まで真っ赤だ。かわいいな」
「もうっ、からかわないでください!」
真っ赤な顔で歩き出す私に、清貴さんが声を出して笑う。
家に帰ったら、彼にまたあのお守りを渡そう。
今度はきちんと受け取ってもらえるように。
結ばれた縁を、いっそう強く結んでいきたいから。