愛艶婚~お見合い夫婦は営まない~
「どうした?スマートフォン片手に固まって」
そこにちょうど、お風呂からあがってきた清貴さんが姿を表す。
濡れた髪をタオルで乾かしながらこちらを見る彼に、私は唯ちゃんからのメッセージについて説明した。
「それで、土曜日にご飯行ってきたいんですけど。大丈夫ですか?」
「もちろん。それにその日なら確か俺も本社に行くから、送迎しよう」
「えっ、いいんですか?ありがとうございます」
ふたつ返事で了承したうえに送迎までしてくれるという彼に、笑ってお礼を言うと、すぐさま唯ちゃん宛に同意の返信をした。
唯ちゃんに会えるの、楽しみだな。
どんなことを話そうかな、清貴さんのこと話したいな。胸を膨らませ、私はふふと笑った。
それから数日後の週末。
土曜日の午後、私の姿は銀座のとあるビルにあった。
よく晴れた空の下、開放的な屋上テラス席が特徴的なそのカフェで私の向かいにはショートカットの女の子……唯ちゃんが座る。
「もう、春生ってばいきなり仕事辞めたと思えば箱根に嫁いだなんて……超びっくり!」
大きなピアスを揺らしながら大きな声で笑う唯ちゃんは、相変わらず人懐こく、顔を合わせなかった数ヶ月という時間を感じさせない。
「私が一番びっくりしてる。人生なにがあるかわからないよねぇ」
カフェラテの注がれたカップを手にあははと笑う私に、唯ちゃんも呆れたように笑った。
実は唯ちゃんに結婚の話はしていなかった。
なので今日会って早々にこれまでのことを話したところ、唯ちゃんは驚きを連発してようやく落ち着いたところだ。