愛艶婚~お見合い夫婦は営まない~
「清貴さん」
「ちょうどよかったな」
小さく笑ってくれる、その笑顔に安心する。
清貴さんに促され助手席に乗ると、彼も運転席に乗りゆっくりと車を走らせた。
「友達とは楽しめたか?」
「はい。この時間までついつい話し込んじゃって……清貴さんはお仕事どうでしたか?」
「どう、というほどのこともないけどな。そうだ、父から春生にお土産を預かってきた」
「お土産?」
清貴さんは、運転しながら後部座席を指差す。
その先を見てみると、そこにはシャンパンゴールドが美しい高級感のある紙袋が置かれている。
「フランスに行ってきたらしくてな、有名ショコラティエの店のチョコレートだそうだ」
「ふ、ふらんす……」
フランス、有名ショコラティエ、その響きだけで自分にはもったいないと尻込みしてしまう。
紙袋からして明らかにお高そうだし……。
まだ一度もきちんと挨拶もできていないのに、申し訳ないなぁ。
今度ご挨拶に伺うときには、私もいいものを用意しておかなければ。
「……今度自分もいいものを持って行こう、とか思うなよ」
「え!?どうしてわかったんですか!?」
「春生の考えそうなことはだいたいわかるようになってきた。……ちなみに張り切っていいものを渡すと、親は喜んでもっと上等なものを返してくるぞ」
それはそれで恐ろしい……!
会話をしていると、ほどなくして車が止められた。
辺りを見ると、そこは車がずらりと並ぶ地下駐車場だ。
てっきりこのまままっすぐ帰るとばかり思っていたので不思議に思っていると、清貴さんがシートベルトを外す。