愛艶婚~お見合い夫婦は営まない~
「はっ」
目を覚ますと、そこは太陽の光が照らす午後のリビング。
窓から入り込む柔らかな風が、カーテンをふわりと揺らしていた。
家事をひと通り終えて、テーブルに伏せるうちに気づいたら寝ちゃっていたんだ……。
それにしても、いやな夢見ちゃったな。
額ににじんだ汗を指先で拭いながら体を起こす。
すると、自分の肩にブランケットがかけられていることに気付いた。
「起きたか?」
その声に振り向くと、そこには今朝仕事へ出たはずの清貴さんの姿がある。
「あれ、清貴さんどうして?」
「忘れ物を取りにきたんだ」
言いながら清貴さんは、書類の入ったクリアケースを見せた。
そっか、清貴さんがブランケットをかけてくれたんだ。
彼の優しさを感じてブランケットをぎゅっと抱きしめていると、その目はこちらをじっと見る。
「春生、大丈夫か?」
「え?」
「寝てる間、少しうなされてたから。嫌な夢でも見たか?」
嫌な夢……。
その通りではあるけれど、事実は言えずに飲み込んだ。
「そう、ですね。大量の鳩が群がってきて窒息しかける夢を見ちゃって!」
「……それは嫌だな」
適当な話で誤魔化した。その嘘に気づくことなく、想像したのか、不快そうに同意してくれる清貴さんに私は笑ってみせた。
清貴さんと話してると、さっきまでの嫌な気持ちも吹き飛んでしまう。
愛しさと安心感を、覚える。