愛艶婚~お見合い夫婦は営まない~
「わぁ……どれも美味しそうで迷っちゃいます」
あれもこれも美味しそう、と目移りしてしまう。
「なら全部買うか」
「ってそれは欲張りすぎです!もう、清貴さんの言うとおりにしてたら私太っちゃいます」
「もう少し肉付きよくてもいいだろ」
そう言って清貴さんは私の二の腕をつまむ。
「セクハラです!」
そんな私たちのやりとりを見て、店員さんはおかしそうに笑った。
「なら、何種類か買って俺とシェアして食べるか」
「いいんですか?でも清貴さん甘い物大丈夫でしたっけ」
「得意じゃないけど。まぁ少しくらいなら」
清貴さんが甘いものを食べているのは見たことがないし、コーヒーもいつもブラックだから、本当は苦手なのかもしれない。
でも私のためにと提案してくれたのかな。
その気遣いが嬉しくて頷くと、店員さんに4つほど選んでもらうようお願いした。
「では定番のプレーンに、人気のスフレと……4種類お選びしますね」
「お願いします」
「それにしても、とっても優しくて素敵な彼氏さんですね」
率直に褒めてくれる彼女に、私は迷わず同意する。
「はい、自慢の主人なんです」
躊躇いなくのろけて隣を見ると、清貴さんは手で目元を覆いながら顔を背けている。
微かに見えるその顔は赤く、照れているのだろう。
そんな彼に、私と店員さんは目を合わせて笑った。