ようこそ、貴重遺品保管の舘へ。
「アイスコーヒーです。どうぞ。」
目の前に置かれたコーヒー。私はありがとう、と少女に伝える。
「ああ、ありがとう真胡。」
彼も彼女にお礼を言う。
「人を召使いみたいに扱うのやめて、唯人。」
ぷくりと頬を膨らませて彼を見る。どうやら目の前の彼の名前は唯人と言うらしい。
少女は16、7歳だろうか。私も同じくらいの年の娘がいるので多分それくらいだろう。金色で腰あたりまである長い髪。身長は少し小さく、彼女たちが着ている制服が彼より少し大きく見える。彼女もまた、整った顔をしていた。しかし、彼女は彼と比較すると、少し無愛想という印象だった。
「ところで、」
彼は彼女から私に視線を戻した。
「この舘について少し説明しておきましょう。」
彼は私が落ち着くまで少し時間を置こうとしているのか、この館について語り始めた。
「この館は、''貴重遺品保管''の舘。その名の通り、亡くなった方が人生の中で1番大切にしていた1つのものを魔法で永久に朽ちることなく保管している場所です。」
彼はにこりと微笑み、
「そして、その方の大切にされた遺品が、たとえその方が亡くなる前に破損、または紛失されていたとしても、ここではきれいに元通りのものが再現されるようになっています。」
隣にいた少女が次に続ける。
「ここの館ではこの辺り一帯で亡くなった方の遺品を保管しております。」
彼女は、アイスコーヒーを乗せていたお盆を彼女自身の目の前に置いた。
「申し遅れましたが、私がこの館の管理人代表の 林田 真胡 と申します。そして、彼が 森 唯人 です。」
私は少女が、この館の管理人代表だということに驚いた。年齢的に彼がそうだと思っていたからだ。
しかし、驚きを隠すように笑顔を作り、宜しくお願いします。と伝えた。
「私は、この仕事をいわば、魂を集める仕事だと思っています。人が大切にしていた遺品、それはまさしく魂のようなものに近いと思うからです。」
そう言った彼女は少し誇らしげに見えたが少し寂しそうだった。