ようこそ、貴重遺品保管の舘へ。
過去
私と夫はたまたま友人の紹介で出会い、恋に落ちた。それからすぐに結婚して娘も授かった。とても幸せな家族だった。
しかし、娘が小学校高学年になり始め、自立をし始める頃、夫の帰りが遅くなる日が多くなった。
それでも、私は自分に、彼は仕事が忙しいんだ、やましいことは何も無い、と言い聞かせて毎日過ごしていた。
それも実は正しくて、ちょうど夫が部長に昇進するかもしれないと言った大事な時期なのは前に聞いていて、知っていたからだ。
そんな時期に彼は事故にあった。車が飛び出してきて、一時意識は戻ったものの、彼は帰らぬ人となったのだ。
もし、彼が浮気をしていたら?私は結局彼に何も聞けないままだった。
ーーー結婚指輪。もし、彼が私を一番大切に想うならば、彼の遺品はこの結婚指輪に違いない。あの頃、幸せだった頃のもの。でも、彼が浮気していたら?彼が別の人を愛していたとすれば。遺品には彼女との思い出の品が
…。
そう考えると、怖くてずっと館へ向かうことが出来なかった。見ることが怖かった。
もし違ったら、彼との思い出が全て否定される気がしたからだ。
しかし、4年経った今、前に進もうと決心がやっと着いたのだ。