あの滑走路の向こう側へ✈︎✈︎✈︎

二、新たな居場所



5月とは思えないように気温の上がった日の夜、
久しぶりに唯の部屋に紘太が来ていた。
「それで、どう、新しい職場は?
3週間ぐらい経った?慣れた?」

「んー、まだ慣れてはないかな。
課長さんが、3ヶ月経てば一通り自分のやる事、
他の人がやってる事が見えてくる、
仰ってたからね、まず3ヶ月だね」

「へー、良い上司だね」
「ホント、みんな良い人ばかりよ!
課長の下に、リーダーの杉浦さんがいてね。
20代とは思えない落ち着きのあるパパさん。
で、山川さんと中岡さんが正社員さんで、
あと派遣の藤田さんと坂下さん。
前みたいに走ったりイレギュラーでテンパる事
もなく、落ち着いて余裕のある平和な職場だよ」

「事務って何するの?」
「経理だよ」
「え?経理?唯、経理できるの?」
「え?経理のケの字も知らないけど、
課長がヤル気と根気があれば経験は不問って。
あと、ソフトが賢いから、常識と虎の巻に 
従えば、意外と何とかなってる」

唯は続けた。
「内線で、営業さんに電話かけたの、
そしたら、ハイ港営業所っ!て
おっちゃんが元気よく出てさ、
誰々さんいらっしゃいますか?って聞いたら
誰々やったら、今、行商出てんでぇ、
またかけたってー、ってカシャって切れてさ、
呆然としたわ」
「なんだか楽しそうな職場だね」

紘太は、自分は学生の頃から現在も未来も、
ずっと同じ業界で生きていくのに対し、
唯が新しい職場へ飛び出し、
たくさんの出会いがある事に、
少し心配と眩さがあったが、
楽しく頑張っているようで安心した。

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