あの滑走路の向こう側へ✈︎✈︎✈︎

八、奇妙な偶然



3人で夕食を終えると、
賢太が持ってきたワインを開けた。

「唯、TOEICの分かんないトコ、
 賢太に教えてもらったら?
 一応、毎日喋ってるんだし」
「へー、唯さん、TOEIC受けるの?」

唯は答えた。
「紘太が忙しくて遊んでくれないしさ、
 週末の暇つぶしに、最近はあれこれ資格などね」
「え、そうなの?」
紘太は意外そうだった。

「映画1回分のお値段で、1冊本買ったら、
 3ヶ月ぐらい潰せるって、コスパ高くない?」

「ふーん」
賢太が意外そうに言った。

お酒に弱い紘太は酔っ払って、
ソファーに伸びてしまった。
唯は賢太と2人で話していた。

「兄ちゃんに彼女出来たって聞いて、
 医者目当てのどんなヤツかと思って乗り込んだけど
 思いの外、ちゃんとした人で驚きました」

賢太のあけすけな言い様に、唯は苦笑した。

「たまたま医大生だっただけで。
 紘太の友達と、姉弟で仲良くしてもらっててね。
 弟も同じ中高なの」

少し納得した表情で、賢太は言った。
「へー、俺もですよ、同じ中高。
 弟って何歳ですか?」
「24かな」

「え?マジすか?苗字なんでしたっけ?」
「芹沢、弟は芹沢歩崇せりざわほたか」
「うわー、歩崇の姉ちゃんかよ!
 世間は狭いな。
 歩崇、今、何してんすか?」

賢太が興奮して喋るので、
ソファーで寝入っていた紘太が目を覚ました。

「ナニナニ?何か楽しそうね」
急に打ち解け、盛り上がっている唯と賢太に
紘太はニコニコと割って入った。


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