あの滑走路の向こう側へ✈︎✈︎✈︎
九、姉弟同盟
夏休みに弟の歩崇が帰省してきた。
唯は歩崇を誘ってカフェにいた。
「二人で出かけるの、久しぶりだね」
「そうだね、昔は二人で住んでから、
たまに出掛けてたよね」
唯は話を切り出した。
「歩崇、高峯賢太って人、知ってる?」
「おう、賢太、中高の同級生だよ。なんで?」
歩崇はかなり驚いた様子だった。
「実は、その、賢太君のお兄さんと付き合ってるの」
「え、マジで? 確か、医者目指してなかったかな」
「そう、今、大学病院で働いてる」
「いいの捕まえたねぇ」
歩崇は一瞬ニヤッとしたが、
すぐに真面目な顔に戻った。
「えー、でも姉ちゃん、大丈夫なの?
じぃちゃん、お見合いさせる気満々っしょ?」
「んー、だからさー、そん時は味方頼むよ」
「じぃちゃん怖いからなぁ」
「って言うか、アンタはどうなの?」
「俺? 研究職には進まないかな。
院に進んで実感したよ、天才には敵わない」
「おじいちゃま、どうすんの?」
「そん時は、味方頼むよ」
二人は困ったように笑った。