あの滑走路の向こう側へ✈︎✈︎✈︎
十二、いつものすれ違い
転職で東京に引っ越してから、
はや1年数ヶ月が経っていた。
美香は、国立伝統美術館に茶碗作家の
展示を観に来た。
学生の頃、美香は真樹とよく焼き物の
展示会に行っていた。
真樹は、祖母が茶道の師匠で、
小さい頃から、作法は分からずとも初釜などに
顔を出していたので、馴染みがあり、
茶碗にも興味を持ったらしい。
その影響からなのか、美香も就職してから、
唯の茶道の師匠に師事するようになった。
展示を観終えた美香は
心洗われたような気持ちで、
感動をSNSにあげた。
夜、SNSにメッセージが来ていた。
真樹からだった。
〈僕もちょうど今朝行ってたんだ〉
それは、数年ぶりの連絡だった。
あぁ、真樹は私がこっちに戻ってる事、
知ってたんだ、
知ってて、今まで連絡くれなかったんだ、
美香はそう思ったが、冷静を装った。
〈あー、私は昼から行ったのよ、
ちょうどすれ違いだったのね〉
いつも、ずっとすれ違ってきたけどね、
と美香は思いつつ、言い出せばしなかった。
何年ぶりだろう、
もう、真樹とは…
一人で勝手に真樹に振り回されるのは
しんどいから、もう…と思っていたのに。