あの滑走路の向こう側へ✈︎✈︎✈︎
二、出会い
史緒里は、石田の先輩の様子を
機内に引き継ぐ必要があるか確認する為、
搭乗待合室内を探していた。
石田を見つけた史緒里は近寄った。
「お客様、お連れの方の具合はいかがですか?」
すると石田は驚いて言った。
「おぅ、旗野! 随分丁寧だな!
先輩、大丈夫っすか?」
青白い顔をした男性が、ベンチにもたれて
座っていた。
「だいぶラクになってきた」
史緒里は、ミネラルウォーターを差し出した。
「これ、良かったらお飲み下さい」
「水よりゲロ袋のがいいんじゃないっすか?」
石田がからかうように言うと、史緒里は
「え、お待ちしましょうか?」 と慌てた。
先輩という男性は、
「機内にもありますから」 と恐縮して断った。
「では、CAにも引き継いでおきますので」
と史緒里が言うと、先輩は
「いやいやいや、それは恥ずかしいんで止めて
下さい!」と狼狽した。
史緒里は立ち上がり、
「かしこまりました。では、お大事に。
気を付けて、いってらっしゃいませ」
と言うと、去って行った。