あの滑走路の向こう側へ✈︎✈︎✈︎

五、募る想い



世間は春休みに入り、
唯が繁忙期の忙しさに追われているうちに、
紘太は研修医として多忙な日々が始まっていた。

唯がメールを送っても、
紘太からの返信は、次の日やもっと遅い時も。
「返信遅くなってゴメン」
「充電切れたまま、病院泊まってて」
「ちょっと会う約束とか、難しいかも」

かみ合わないやり取りに募ってゆく
もどかしい気持ちを、
唯は、新入社員が入り、せわしい職場で
日々の業務にごまかし、やり過ごしていた。

ゴールデンウィークを週末に控え、
新入社員達の初めての繁忙期に備え、
準備をしていた唯に紘太からメールが届いた。
「GW、どこか1日ぐらい時間取れそうだけど、
 忙しいかな?」

唯が待ちに待った返事だった。

「4日ならお休みなんだけど」
「じゃあ4日で!」

この短いやり取りに、
1ヶ月くすぶりつづけたモヤモヤが、スッと晴れ、
唯は至福を感じていた。

紘太との約束を思えば、
目の前の浮足立った乗客達の相手をする事も
いつも以上に楽しく思えた。

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