あの滑走路の向こう側へ✈︎✈︎✈︎
第5章 茉莉奈@空港

一、プロローグ


夏休みを迎えた時期、
空港は賑わっていた。

「では、お預けのお荷物がございましたら、
 4番カウンターでお預け下さいませ。
 行ってらっしゃいませ」

(つじ)茉莉奈(まりな)が搭乗手続きカウンターでお客様を見送ると、
カウンター前のベンチで手を上げる男性がいた。

客がはけたのを見計らって、
その男性は近付いてきた。

「お兄ちゃん、何? どうしたの?
 どっか行くの?」
茉莉奈は小声で話しかけた。

「おぅ、妹よ、ホントに働いてるんだな。
 昼過ぎには終わって、実家に帰るんだろ?
 乗せてってくれよ」

兄の啓輔けいすけはにこやかに言うと、
後ろを振り返った。

ベンチには、スーツケースを前に男性が
座っており、茉莉奈に気付くと、
軽く会釈した。

「勤務時間は2時半までだけど、
 こんな忙しい時期、すぐには帰れないかもよ」

「オッケー、昼飯まだだから、食って
 ブラブラしてるよ」

啓輔は、ふらーっと去って行った。


早番終わりのミーティングが終わると、
茉莉奈は、同期の槙原まきはら遥はるかに

「なんだか知らないけど、兄が来てて、
 実家に乗せて帰れって言ってるから、
 忙しい時にゴメンけど、先に帰るね」

と耳打ちすると、ロッカーに急いだ。

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