あの滑走路の向こう側へ✈︎✈︎✈︎
六、伝えなきゃ
一日千秋の思いで迎えた約束の日、
紘太は唯のマンションに車で迎えに来た。
車が右へカーブを曲がると
光る海が見えてきた。
唯が、この瞬間が続けばいいのにと思った時、
車は道を逸れ、駐車場に停まった。
まるで船が海に浮かんでいるかのような店だった。
「素敵なカフェね」
「ここ、ラザニアがうまいんだよ、
俺、猫舌だから、大変なんだけどね」
「ふふ、じゃラザニアにしよっかな」
笑いながら唯は思った、
私、いつも紘太の話聞いて笑ってる、
二人で笑い合える、その暖かい幸せ、
唯の中で何かが弾けた、
今日、伝えなきゃ。
浜辺を散策する唯に紘太は言った。
「今日も夜には病院に戻らないといけないんだ」
「そっか、忙しいね」
「ゴメンな」
「ううん…」
また次会えるなら、そう続けたかったが、
やっとの事で今日の都合をつけてくれた紘太に
唯は言う事ができなかった。
車は静かに唯のマンションの下に停まった。
「今日はありがとう」
「こちらこそ」
「すごく楽しかった」
「俺も」
唯は海辺での決心を思い返した。
「私、紘太といると、いつも笑ってる気がする。
いつも、すごく楽しい。」
「そう?良かった」
「だから…その…これからも…って言うか、
私と付き合ってもらえたらなって思ってて…」
少し間があり、紘太は困ったように言った。
「うれしいんだけど、
俺、ホント放ったらかしちゃうかもだよ?
今までも、メールとか全然できなかったし」
「わかってる、紘太が忙しいの、理解してるつもり」
「次、会えるの、お盆になるかもよ」
「遠距離恋愛だって思う事にする」
「ふっ、なるほどね」
紘太は続けた。
「じゃ、改めまして、
唯、俺と付き合って下さい」
唯は笑顔で答えた。
「よろしくお願いします」