あの滑走路の向こう側へ✈︎✈︎✈︎
十、再会
航はホール近くの川沿いのカフェに入った。
「どうだった?
屋敷さん、すんごい飛んでたでしょ」
「いやー凄かったです。
あと、さっきの、出待ちのおば…いや、
お姉様方も、凄かったですね」
「演奏の合間に観たりするけど、
技術もオーラもスゴイよ。
まぁ、贈りたくなる気持ち解るよ」
2人は、ついでに夕食も済ませた。
カフェを出ると、川をなでる風が心地良かった。
「航さんは、楽団がホテルを
用意してくれてるんですか?」
「いや、自腹だよ。東京は高いから、
カプセルホテルにでも泊まろうと思ってる」
「え!そうなんですか?
うち、来ます?」
思わず口から出た言葉に、
茉莉奈は自分でも慌てて、弁解した。
「うち、ソファーベッドとかあるし、
近くに大きい公園もあって、練習もできるし、
少し遠いけど、この劇場まで乗換なしで
行けるし…」
「いや、でも女の子の家に泊まらせてもらうなんて」
「兄もこの状況なら賛成すると思うんです」
「確かに、啓さんは、そう言いそうですね」
航が笑い、茉莉奈もつられて笑った。
「じゃ、宿泊代として、公園でフルート
聞かせてもらうってのは、どうですか?」
茉莉奈は提案してみた。
「そんなのでいいの?」
「もちろんですよ!プロの演奏が聞けるなんて」
「うーん、いいのかな…」
「じゃ、ブラス、ムッシュークロベの
クロワッサンで落とし所を付けません?」
航は吹き出した。
「分かったよ、またお世話になります」