あの滑走路の向こう側へ✈︎✈︎✈︎
第6章

一、プロローグ




早朝の空港は、初便へと急ぐ搭乗客たちで
活気に溢れていた。


〜〜お客様のお呼び出しをいたします。
東京羽田へご出発の……様、……様、
お伝えしたい事がございます
お近くの係員までお知らせください〜〜


ゆったりの流れるアナウンスとは反対に
平日の朝のビジネスマンたちは
いそいそと手荷物検査場へと吸い込まれていく。

旅慣れた彼らは搭乗手続きカウンターへは
寄る事もなく、搭乗待合室へと足早に急ぐのを
井上(いのうえ)玲奈(れいな)はカウンターから見送っていた。


そこに一人のビジネスマン風の男性が
カウンターへと近付いてきた。

「すみません、先ほど呼び出しされた
 鈴木ですけど」

「いらっしゃいませ、鈴木様、少々お待ち下さい」

玲奈は端末で調べてみた。

「鈴木様、前回ご搭乗いただいた際に、
 機内持込制限品のハサミをお預かりして、
 お返しできてないようです」

「あぁ、帰り、他社に便変更したから、
 そのままになってました」

「かしこまりました、では、今回のお帰りの際に
 お受け取りになりますか?」

「今回も帰りは他社なんです。
 帰ってきた時に、またカウンターに寄っても
 いいですか?」

「かしこまりました、ご用意しておきますので、
 お帰りの日と便名をお知らせ頂けますか?」

「今日の夜8時頃に着くやつなんですけど」

「かしこまりました、ご用意しておきます。
 お手数おかけして申し訳ありませんでした」

「いえ、こちらこそ。
 ところで、末広町に住んでませんでした?」


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