あの滑走路の向こう側へ✈︎✈︎✈︎
七、食事の誘い
それから1週間ほど経った夜、
玲奈は崇と食事していた。
「ホント、ビックリしたよ、
まさかタカちゃんだなんて」
「普通、気付くでしょ、名前とか」
「だって、鈴木なんて、よくある名前だし」
「今、日本中の180万人の鈴木さんの
反感買ったぞ」
「わー、ゴメン、日本中の鈴木さん、ゴメン!
それに、タカちゃん、変わりすぎてて、昔は…」
「みなまで言うな」
2人は笑った。
「タカちゃん、東京の音大行ってたんだよね。
スゴイなぁ、私も小さい頃ピアノ習ってたけど、
親にやらされてただけで、もう全然…
って言うか、タカちゃんがピアノしてたの、
知らなかったよ」
「はは、そう? まぁ始めたの、
小学校入ってからだしな」
「へー、それじゃ知らないか。
小学校からで…スゴいね…」
やや間があって、崇が言った。
「キッカケはレイちゃんだよ。
レイちゃんが弾いてるの見て、始めたんだ。
なんか、とても楽しそうで」
崇の真剣な顔に、玲奈はドキッとした。
「へ、へー、そんな事あったっけ?
へー、そうだったんだ」
玲奈は少し話を進めてみた。
「え、でも、音楽の道はもうよかったの?」
「あー、うん、稼業を継ぐなら、
それまでは、やりたい事やらせてもらう約束で、
結構やりきったかな。留学もさせてもらったし」
「そっかー、そうなんだ」
2人は、たった数時間で
空白の20年分の話をした。
幼稚園の頃からは想像だりできない
崇の20年だった。
「へー、でも一度タカちゃんのピアノ
聞いてみたかったな」
「今度、実家おいでよ。
現役の時ほどじゃないけど、弾けるよ。
家族も会いたがってるし」
「え、いいの? わー、嬉しいな」
玲奈は、子どもの頃遊びに行った
崇の家や家族を思い出していた。