あの滑走路の向こう側へ✈︎✈︎✈︎
八、崇の実家
昔、よく母と遊びに来た瀟洒な家の前に
玲奈は立っていた。
子どもの時にも大きくて綺麗な家だとは
思っていたが、時を刻んだその家もまた
別世界を思わせるような優雅な佇まいだった。
ベルを鳴らすと、
庭の緑の中から、小さく返事があった。
影が近付き、門扉が開いた。
「…ちいおばあちゃま?」
「あらレイちゃん、いらっしゃい。
すっかり美しくなっちゃって。
さ、どうぞ」
庭の手入れをしていた、崇の祖母が
玲奈を家へ招き入れてくれた。
すると、玄関が勢いよく開き、
崇が飛び出て来た。
「ああ、ばあちゃん、開けてくれたの」
「お茶、入れようか?」
「大丈夫、お茶ぐらいなら入れれるから」
「あらそう?じゃあ、庭にいるから」
崇の祖母はまた庭の緑の中に消えてった。
「今日、親と弟は来客で外出してるんだ」
2人は広々したリビングへ連れ立って入った。
「家族はレイちゃんに会いたがってたよ、
また居る時にも来てやって。
母なんて、ケーキやお菓子沢山焼いて、
お土産まで用意してるから、
沢山食べて持って帰って」
崇はコーヒーを入れ、
ケーキなどお盆に載せると、
玲奈を部屋に案内した。
そこにはグランドピアノが置いてあった。
「すごーい!さすが!
ここでケーキとか頂いてもいいの?」
「大丈夫、大丈夫」
崇はそう言うと、ピアノの前に座ると、
おもむろに弾き始めた。
力強く、それでいて優雅な音色だった。
「何がリクエストある?」
「え?うーん、私、昔、何弾いてたっけ?」
「こんなんじゃない?」
「あーブルグミュラー、弾いてた、弾いてた」
「あと、こんなの、歌ってたね」
「わー、幼稚園の園歌!まだ歌えるわ〜」
2人は懐かしい曲や歌で盛り上がった。
そして、玲奈は、崇の母が焼いたお菓子を
もらって帰った。