あの滑走路の向こう側へ✈︎✈︎✈︎
十四、夏休みの空港
夏真っ盛り、世の中は夏休みシーズンで、
空港は繁忙期を迎えていた。
お子様一人旅に、
電車感覚でギリギリに現れる家族、
ごった返す手荷物検査。
いつもならグチの一つも溢したくなる
この忙しさに、
玲奈は救われていた。
目の前の押し寄せる乗客に、
感覚を麻痺させる程の一日の疲れに、
余計な事を想い出さなくて済んだ。
そして、繁忙期のピーク、
お盆休みの終わりを迎えた。
この日は、夕方まで、全便満席。
だけでなく、予約数をオーバーしている。
オーバーブッキングというやつだ。
予約だけして、乗らない人を見越して、
実際に搭乗できる席数以上の予約が
この時期は入っている。
「まったくマーケは、
この状況を体験した事あるのかね」
「ホントに!謝り倒して何とかクリアしても
振り替えた次便がオーバーする、
そして胃が痛いのも次便に持ち越す」
「お客様の気持ち、解るよ?
お盆の予約なんて、すんごい前から
しといたのに、乗れませんって?
そりゃ、ふざけんなって話よね」
「このど田舎の何もない空港で何時間も
何して時間潰せってか」
運悪く、世の中のお盆休みの最終日の早番に
シフトが当たってしまった係員たちは
口々に不安を分かち合う。
年に数回のもっとも忙しい日が始まった。