神埼探偵事務所



「おい、神埼。随分とその女に入れ込んでるみたいだけど、それはあの時の罪滅ぼしってか?」

「───…。」



「あの時俺が一緒に帰ってやったら、サクラはクソ親父みたいなロリコンサイコに出会わなかったし、今こうやって危険に晒す事も無かったのに。って……そう思ってんのか?」



「なあ、神埼。お前はどんな気持ちなんだよ?」



「俺は自分の親父に見放され、お袋にも捨てられて誰にも認めてもらえる事無く、時には達也として、そして時にはサクラとしてあいつにぶち犯された。」

「そんなお前は大事な女に幼馴染として、そして男として認められてる。………でも、捕まえれそうで捕まえれない俺の親父は今もサクラを犯す事を想像して1人でせんずりこいてるワケだ。」

「関係のない子供達を信者に誘拐させて、どれを犯そうか、どれを試そうかと心の中で考えてるワケだ。勿論、お前の大好きな青海サクラの顔を浮かべながらな?」



「なあ……なあ、神埼。おしえてくれよ。それってどんな気分なんだ?天にも昇るほど鼻が高くて気持ちの良い………ッッ!!」


アメリカのドラマでもまあ見かけない様なサイコなセリフを息継ぎ一つすらしないで、スラスラと話す平沢の頬にドデカイ一発を放ったのは……勿論、私の大好きで、そして短気な所も併せ持つ神埼大河だ。

なぜかしらないけれど、ハァハァと肩で息をしている所を見ると相当、この一発に思いや力を込めたのだろう。

止めに入る久本さんや三島さんの事を随分と雑に引き離しながら、連行されかけていた平沢達也の胸ぐらを掴み、思い切り顔を近づける。


──……まるで、こんなシーン、漫画の一節みたいだ。と、本気でそう思った。



「………を名前で呼んでんのか分かってんのか?」


「…ああ?声が小せえよ。」




「──誰の女を気安く名前で呼んでんのか分かってんのか?って。そう聞いてんだよ。」

此処からは後ろ姿しか見えないけど…でも、この場を取り乱した当の本人、平沢達也の顔はハッキリと見える。

低くて、骨の髄まで響く様な大河の声を聞いたと同時に今までの余裕そうな笑みが消えたのを私は見逃さなかった。



「罪滅ぼし?ふざけんじゃねえ。一生かけて愛してやるって決めた女をこの手で守って何が悪いって言うんだよ。なあ?」

「お前の親父が捕まえれそうで、捕まえられない?そいつがサクラの事をぶち犯すつもりでいる?」



「……この俺が」




「この神埼大河が、自分の愛した女をそんなサイコのクソ野郎に手渡すと本気で思ってんのか?大事な女に……これでもかって位、トラウマ与え付けた男に唾も礼状も何も掛けないでそのまま唇噛んで見過ごすって、そうせざるえないって本気でお前はそう思ってんのか?」




「………じゃあ!じゃあ、何で俺なんだ!俺じゃなくてもあのクソ親父を先に「…頭わりィなぁ。だから親父に相手されなかったんじゃねえの??」


「なっ…!」



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