神埼探偵事務所




「俺は確かに死ぬ気で青海サクラを愛してるし、これから先自分の命に替えてでもコイツを守っていく。」

「でもなあ、俺の愛したサクラは自分だけ幸せならそれで良いって思う様な器の知れた女じゃねえんだよ。」



「だから俺も……」

「サクラの為に、そして探偵として生きる神埼大河の名の元に被害者を一番傷付けない方法であいつを逮捕するんだ。」




「確かに、サクラだけの事を考えるならば何か適当に因縁付けてお前の親父を引っ張れば良かった。その間に証拠を見つけたら良かった。」

「でももしあいつが牢の中から信者に何か命令して、子供達を危険に晒したら?お前を動かして幼い命を奪おうと画したら?」



「サクラが泣くんだよ。……コイツがまた自分の中で一生かけても治らないほどのトラウマを抱えんだよ。」





「はっ、そんなんキレイ事だろうが。何がサクラの為だ。結局お前は「……平沢。」



「わりぃけど、これ以上何言われても響かねえんだわ。」


「俺はコイツを俺なりの方法で守るし、愛す。」

「そこに関してお前にアレコレ言われる筋合いは無い。し、サクラの事は俺が一番分かってる。ポッと出でコイツに絡んだお前の何百倍もな。」



「だからつべこべ言わずに、お前は日本の警察の怖さを今から思い知ればいいんだよ。」



「……怖さ?」




「久本さん、確か平沢達也って身元引受人になる様な両親って居ませんでしたよね?」





「………。」



「久本、私が答えよう。……ああ、大河くんの言う通り。平沢達也は現在、住所不定の身元引受人になる様な親族の者は居ないとして我々のデータベースに記載されている。」


「って事は平沢憲一っていうサイコへの連絡義務は?」



「平沢憲一?……誰だ、それ。」

「そんなもの、現行犯で逮捕された人間に義務等あるわけないだろう。」





「コイツに残された道は一つ、司法取引のみだ。」



シーンとなる空間で、平沢だけじゃなく、私やチーママ全員が神埼大河と云う男の恐ろしさや権力、日本警察の闇の怖さを知った。

勿論、大河や三島さんといった上に立つ者以外の刑事も何も言葉を発さない所を見ると、この会話に心底驚いているに違いない。



──ある意味、この会話の被害者でも在る平沢達也は声を挙げる事さえ忘れたように、呆然とした表情で警察に連れられ、店を後にした。





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