神埼探偵事務所
ネットフリックスオリジナル映画でも、余り見ない様な強引な身元確保から2日が経った。
一見、事件解決まで後少しの様に思われたが、何をされても・言われてもやっぱり親子の絆ってものは赤の他人が簡単に崩しにかかれる様なものではない。それが愛情と憎しみの境界線に有るモノでは、尚更だ。
「あいつが何かしら吐いてくれれば直ぐにでも礼状取れるのに…」
独り言の様にポツリとつぶやいた大河の肩を優しく叩いた大河父。
重苦しい雰囲気の漂う会議室だけど、今日の彼は誰もがビビって一歩引いてしまう官僚では無く、必死にもがく私の大好きな彼のお父さん。
「警察だからな。何をしても許されるけど、それをするには相当な覚悟とバックが居るもんだ。」
苦い珈琲の香りが、まるで私をハードボイルドの世界へと迷いこませたかの様に錯覚させる。
「警察、なのにな。」
……日本の警察は本当にナメてかかれない凄さが有る。世間では、やれ日本の警察は駄目だ、海外を見習えだ、と言われているけれど…。
あれだけ銃を大っぴらにしない男性達が、海外とさほど変わらない検挙率を誇っている事が、どれだけ日本人が優秀なのか私達に示してくれている。
「機械の様に、論理的に、私情や感情を押し殺して犯人逮捕に向けて多少の無茶もできないのが我々警察官であるならば、お前が警察に成らなかった理由は、今この状況こそがそうじゃないのか?」
「警察に成らなかった理由…?」
「警察に出来なくて、お前に出来る事は何だ。」
「私立探偵で、天才で、事件を面白がるお前だからこそ出来る事が……有るんじゃないのか。」
久本さんや今まで多数の事件で大河と関わってきた大人達は、悔しそうに…だけど、ドコか大河の知性に賭ける様な瞳で、たった1人、この若さで会議室の中心で足を組み、難しそうな顔をしている神埼大河を見つめている。
「………出来る事、なあ。」