神埼探偵事務所


解決するまで??一緒に居ろ??

いや、心配してくれてるのは分かる。この事件が結構難題だからこそ、助手が必要なのも分かる。


でもその為だけに自分の父親に嘘を付かせてまで私に会社を休ませる様な事をするか?


というか、この事件が難題だからこそ何時解決するのかも分からないっていうのが本音だろう。


それなら尚更───。


「……考えるとブルーになるわ。」

ブラジャーを付けてから真っ白のタートルネックに首を通す。上からバーバリーのベストを着て、スキニージーンズを履けば、まあどうにかなるだろう。

昨日、ヒールブーツを履いてきたからコーディネート的には何処に出ても恥ずかしくは無いと思う。



「っていやいや、コーディネートなんかどうでも良いわ。」

人間、頭がこんがらがってる時ほど独り言が増えるらしい。あれこれと、1人で話しながらリビングで1人佇んでいるであろう大河の顔を思い浮かべては頭の中にハテナが浮かぶ。


昔から優しさと同じ位、自己中さがあった男なのは確かだけど──今回は、自己中さの方が勝ってるのも確かだろう。



「はあ……。これが天下の神埼大河なのかな。」


私が大河の幼馴染と云う事は大阪に居る誰も知らない。言ったら面倒臭い事になるのは目に見えてるし。


だけど、今は言いたい。

お前らめちゃくちゃ私の事羨ましがってるけど、こんな自己中男の何処が良いの?と。


着ていた大河のアディダスのセットアップを洗濯機の中に放り込んでからリビングに向かう。

案の定、珈琲を飲みながらソファーの上で寝転んでノートパソコンを見ている大河と目が合った。



「ったく、服着替えるだけでどんだけ時間かかってんだよ。」

「服着替えて、頭の中整理してたの。」



「出た、お前のその嫌味な性格。」

「あのねえ嫌味ってか……いや、そんな事どうでも良いわ。それより、連絡したのって私の会社にだけ?」


「あ?そうだけど。」



「──ああ、それなら面倒臭いことになるかもだわ。どうせ新大阪行って新幹線で東京向かうんでしょ?ちょっと待ってくれる?」

「何?取引先かどっかに連絡入れんの?」


むくっと体制を直した大河に見つめられると、素直に言うのも何だかな…とは思うけど…。

でも良いか、私と大河はただの幼馴染だし。



「いや、良い感じの男の子。同じ職場だから長期休み取るとなったら心配するはずだし。」





「良い…」

「はい?なんて?」


スマホの電源を入れながら、珍しく声が小さい幼馴染に目も向けず、聞き返す。



「良い関係の男だあ?」


「うん、ってか何でそんなにムキになってんのよ。そりゃ26歳なんだし、良い感じの子位居るでしょ」



「俺、そんなん全然聞いてねえんだけど。」


「言う必要ないじゃん。別に悩んでもなかったし、何なら付き合っても無いし。」



「いやいや、言うだろ!!普通は言うだろ?!」

「はい?だから何でそんなムキになってんの?」


ノートパソコンを思いきり閉じて、勢いよく立ち上がった大河に全力で肩を掴まれる。


「ちょっ、本当何?どうしたの?」


「おい」


「はい。」



かなり焦ってそうな感じ。

普段クールで人に嫌味を言うのが好きな彼からは信じられない様な表情。今まで私に彼氏が出来ても、こんな顔された事無かったのにな。



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