神埼探偵事務所
「ちょっと大河…!あのねえ…!」
ついに、だ。
ついに痺れを切らしてしまった。
生理が終わったばかりで本来なら幸せホルモンしか出ていない時期だと言うのに……。
ああ、それもこれも…。
「ったくうるせえなァ…。今、俺が必死こいて仕事してるって見て分かんねえの?」
「……え?仕事?ちょっと待って、それの何が仕事なの?」
私の言葉に言い返すわけでも無く、ニヤリと意地の悪い笑顔で携帯をひらひらと振って見せる私の幼なじみ、神埼大河。
私だって馬鹿じゃない。
仕事とやらが某有名キャバ嬢が織り成す本音トークとやらの動画絡みでは無い事はすぐに分かる。
「──ッ、もーっ!!」
寝転がっている大我を思い切りクッションで叩きつけてから、嫌がらせの様にソファーを力の限り横に動かし掃除機をかけた。
「あっ、聞こえねえだろうが」
「はあ?てか仕事したら??仕事!」
「だからこれも大事な仕事って言って…「ユーチューブ見てニタニタしてるのがアンタの仕事って事?」
「あのねえ!!」
「二、三年前から日本のシャーロック・ホームズだとか工藤新一の生まれ変わりだとか、そんな事ばっか言われて調子乗り過ぎなんじゃないの?」
「俺は調子乗ってねえし昔からこんな感じだろ。」
「…ッ、それでもよ!それでも!」
「アンタの可愛い幼なじみは毎週末事務所に来て掃除してお弁当持ってきて…ってしてるのに、そ「それはサクラ。お前が貧乏だからだろ」
「──び、貧乏って…!」
「貧乏だろ。」
「マサキさんが借金の保証人になってそれがきっかけで警察止めてからと云うもの──サクラ、お前自身もそうやって正社員なのに週末にオレの事務所に来ては小銭稼ぎしてんじゃねえか。」
「……それでもお前は自分が裕福だって…「あー、分かった!ごめんごめん!」
こうなったら勝てっこない事は私にだって分かってる。
伊達にこいつと長年過ごしてきていないんだから。
わざとらしく、はあ…と大きなため息を付いてから勝ち誇った顔をしている大河の顔面目掛けて使い終わった雑巾を投げつけたけれど……。
「はいはい、する事言う事目に見えてるわ」
「…ッ、あっそ!じゃあもう好きにしたら?!」
はい、いつものパターンってやつ。