神埼探偵事務所
結局私達が新幹線に乗り込んだのは午前11時半。
当たり前かの様にグリーン席のチケットを2枚買ったので、静かに座れるかな?と思った私の予想は裏切られ東京までの3時間、ひたすら男と云う生き物について語っていた大河は確かにかなりヒートアップしていた。
挙げ句の果てには『ちょっとプライベートで立て込んでいるのでしばらく会社には行けないし、LINEも返せないなもしれません』と勝手に平沢君にメッセージを送られて──正直、静岡を通過した辺りからは言い返す気力も無かった。
『あんなあ!お前の今までの彼氏はお前には釣り合わねえ様な輩ばっかだったから、どうせ別れると思ってあえて何も言わなかったんだよ!!』
と自信満々に言い切っていた大河は、よほど私の事を一生下僕として使い続けたいのだろう。
多分、自分の方がロイヤル度は上だとは云え、私が自力でロマンチストでお金持ちのボンボンを捕まえた事は腹立たしかったんだろうな、と思う。
「おいサクラ。もう遺族の人達来るだろ、こっち座れや。」
「あ、いいの?」
「おん。いいっすよね?久本さん。」
「ああ、全然良いよ。じゃあ、サクラちゃん。あっち行こうか。」
久本さんと、警察庁からの出向でこっちに来ていると思われるザ・エリートな男性が二人。
後は上野署の署長さんだろうか。
そんな凄い人達を両脇にかためて、私と大河が真ん中に着席し遺族を待つなんて……やっぱりこういう雰囲気は慣れない。
まあ、一般人の私が大河と同じ位、この空気感に慣れてたらそれはそれで問題だけど。
そんな事を思いながら揉みの無い珈琲をちびちび飲んでいた時──。
『失礼致します、遺族の皆様がご到着されました。』と云う、強く太い声が聞こえ、自然と背筋が伸びた。