神埼探偵事務所
こちら側全員が立って頭を下げると、相当泣いていらっしゃったであろう雰囲気の二家族も頭を下げた。
左側が浅丘さん家族、右側が米倉さん家族。
一週間少し前に行方不明になったのは米倉さん家族の一人娘だった。
両家族の母親が大河の顔を見て、驚きながら膝から崩れ落ちようとしているのを旦那様が止める。
男ってのは甘ったれで脆いけれど…‥
でもやっぱり人前ではこうやって理性を保てるもんなんだな。と少しだけ──ほんの少しだけそんな事を思った。
「はじめまして、この度はお忙しい所こちらまでわざわざご足労頂き有難う御座います。──ご存知かとは思いますが、この度捜査に協力して頂く事になりました、こちら探偵の「……神崎大河さん、ですよね?」
「はい、神崎大河と申します。宜しくお願い致します。」
「──ッ、私の娘を…私の娘を見つけ出して下さい!!警察じゃなく…貴方がっ!!」
キリッと久本さん達を睨みつけるお母様の気持ちも分からなくはない。
連続誘拐事件だともっと昔に気付いていれば…娘さん達は彼女達家族の元から消える事は無かったのだから。
「全力を尽くします。」
「ですから、その為にお話を聞かせて貰えればと思い僕は今日、ここに来ました。」
どんな時でも冷静、と云えばそれは神埼大河の得意技でも有る。
猟奇事件が起きても何が起きても、本当は心の中でワクワクしている様なサイコな彼だけど遺族の前ではいつだって冷静だ。
だからこそ、人は皆……大河を『工藤新一』もしくは『シャーロック・ホームズ』と呼ぶのだろう。