神埼探偵事務所
「いや、分かってない!!」
高らかにそう宣言するとお皿の中に入っていたうどんをすすり、残りのビールをグビグビと飲み干した。
絵に書いた様な絶好調具合に思わず大河と目を合わせて苦笑いを浮かべる。
それを見ている大河パパが心底楽しそうな表情だから、まあ良いんだけどさ。
「サクラはな、昔から芸術の才能が有ったんだ。」
「折り紙だって得意だったしな。」
「あー、お前確かにずっと折り紙してたもんな。」
「うん、それは覚えてる。」
「しかも!本当に……親馬鹿承知で言うけど、この子ほど優しい女の子をオレは見たことがない!」
「困ってる人には損得考えずに手を差し伸べて、相手の状況を察して常に寄り添ってあげる。そんな誰にでも出来そうな事が出来ない世の中だからこそ、サクラはどれほど良い子なんだ、とオレは思う訳だ。」
「……サクラはねぇ〜」
「私も覚えてるわ。女の子の子どもが出来たみたいで本当に大河と幼馴染になってくれて良かったって何度も感謝したもの。」
「昔から、この子は人の事を常に考えて行動してきた子だったの。」
「悲しんでる人が居るなら助けてあげよう、皆が笑顔になれればそれで良いじゃん!その為なら私は少し位の傷を受けてあげるよ。って……。」
「大河が留学に行ってちょっとホームシックにかかった時も、サクラはそれを聞くなり毎日ポストカードを大河に送り続けてたでしょ?」
「バイト代を使ってネットカフェに行ってスカイプで何時間も話したりして…。」
「ある日、大河がイギリスに居た時かな?サクラが泣いて家に来た事が有ったの。目の下に切り傷作ってね。」
「たまたまマサキさんは夜の部でタクシー出してて、家にはパパも居たから二人で慌てて事情を聞いて。」
「じゃあ、20代そこそこの女の子が彼氏っぽい子と喧嘩して手を上げられそうになってたから助けに行ったって言うのよ。」
「道端で、夜の20時位によ?その根性って凄い事だし、最後の最後まで知らない女の子を庇い続けたサクラの優しさに私達二人感動してたもんね。」
「ああ、あれは覚えてるよ。多分、サクラと大河がまだ16歳くらいのときかな?」
「家に遊びに来るサクラはいつも楽しい感じで、ご飯食べて、話して、サクラ専用になってる客人ルームで寝て此処から学校行って…って云う感じだっから余計に、ね。」
「その話し、オレ知らねえんだけど。」