神埼探偵事務所
そこからは頭痛も起きずに、楽しく宴を楽しんだ私達五人。気付けば日付が変わりそうだったので、準夜さんが代行を呼んでお父さんを返してくれた。
私は……
『おい!サクラ!今日は一緒に帰るぞ!朝まで飲み明かそう!お前はただでさえあんまり東京に帰ってこないんだからな!!』
なんて云う絡み酒全開の我が父親が相当ウザくなって、当たり前かの様に大河ママに此処で泊まるねと報告をして……大河のスウェットに着替えて、今に至る。
何だかんだ今日は疲れたから寝るわね。と言った私の腕を掴んで『朝まで映画見るぞ』と半ば強引にリビングの真っ白いソファーに座らされる位なら、結局父親と家に帰っても一緒の事だったんだろうけど。
まあ、大河は酔って無いからその分マシかな。
早く寝ないとダメだぞ、といつまでも私達二人を子ども扱いする大河パパお手製のホットレモネードを飲みながら二人でネットフリックスを付けた。
「何でも良いけど、羊たちの沈黙とかグロテスクなのは止めてね。」
「それってかなり選択肢狭くね?」
「あんな映画見たらしんどくなるもん。久しぶりにラブコメとか見ようよ。」
「ああ?!んなもん、俺がしんどくなるわ。」
「なにそれ、高校の時に二人で見に行ったの覚えてないの?」
「……え、いつ?」
「あれだよ、冬休みで大河が帰国してた時。歌舞伎のTOHOシネマズで見たじゃん!」
「──あ、七色の夕日、か?」
「そうそう。…っていうか大河あの時のコト覚えてる?」
「ああ、あれだろ。お前が違法の路上キャッチにしつこく声かけられてたの。」
「そうそう。それ!」
リモコンで映画を選びながらも、どうやらあの時のコトを思い出して相当楽しいのか少しニヤけてる大河が何故か愛おしい。
「未成年ですから!って言っても、それでも紹介できる所あるからって向こうが引かなくて、そんな時に大河が遅れて到着したんだよね。」
「おん。」
「で、『俺の父親、警察庁の公安関係の者で、ソイツは俺の大事な幼馴染なんですけどそれ以上しつこくキャッチします?』って言ったら……」
「ははっ、思い出したわ、鮮明に。向こうが、ただのナンパでした!ってショートコントみたいに走って逃げてったんだよな。」
そう言いながら、本当に……文句の付け所1つ無いほどのキレイな顔で笑われると不覚にもドキっとしてしまう。
「……ッ!」
「サクラ?どうした?また頭痛いのか?」
「いやっ…あの…そうじゃなくて…」