神埼探偵事務所
20年前に私の父親が借金の肩代わりが原因で警察官を辞めるまでは、大我が言った通り『今ほど貧乏』では無かったし、もっと云えばあの時はお母さんも居て、父は優秀な捜査一課の一線で活躍していて……。
普通の家庭だった、とは思う。
───し、大河と幼なじみになれたのも私の父が警視庁に入庁出来たからだし。
「やっぱり時々色々と思い出すよね、こういう話しすると。」
「ん?何を?」
急に声のトーンが落ちた私を不思議に思ったのか、動画を停止し、重い腰を上げてソファーに座り直した幼馴染。
「ん〜、言っても変わら無い事は分かってるけど、あのまま過ごしてたら私には又別の人生が有ったのかな?とか。」
「何だそれ。ついにマサキさんを連帯保証人にさせた高田圭吾ってヤツの顔を思い出したとか?」
「いやいや、それは全く記憶にないから。」
お父さんも大我も『あの高田圭吾だよ!よく家に来てただろ』と口を揃えて言うけれど、本当に全く何一つも覚えていないのだ。
でも話によると、その人が蒸発したからウチは借金を抱えることになり、お母さんが愛想をつかして男を作り出ていった。
その事実だけは一生変えれないし変わる事も無いと思う。となれば思い出したくも無いのが本音。
「ま、それでもアンタの家系には足元及ばないけどね。」
「大河のパパは東大法学部主席で卒業した元国家公安委員会の委員長だもん。」
「ママは関西で有名な土地持ち一家の一人娘。そんな間に産まれた一人っ子の神埼大河って…本当、性格がもう少し良ければもっとモテモテだったのにね?」
国家公安委員会委員長……
この国"日本"の警察組織の大ボス、だ。
「うるせー。今でも充分過ぎる位にはモテてるわ。第一、こんなに男前で身長高くて❝探偵❞っていう女心をくすぐりそうな仕事してて?」
「英語とロシア語がペラペラで?」
「数々の未解決事件を解決してて?」
「どの世界に、そんな最高最強な俺の性格が少し捻くれてるからって嫌いになる様な女居るんだよ。俺に散々文句言ってくるの、マジでお前くらいだからな?青海サクラ。」