神埼探偵事務所
何十畳とある様な広い畳の大広間に、バルコニーには石で出来た上品な露天風呂。
ベッドはフランス製のマットを使っているらしく、今まで泊まったどのホテルの物よりもフワフワで寝心地が良さそうだった。
……あれから直ぐにお会計をして箱根に向かった私達は、荷物を置くなり各自旅館の大浴場で一風呂浴びて、街中を少し散策し、19時にお部屋で海の幸がふんだんに使われた豪華なディナーを楽しんだ。
「っはあ、美味しかったし楽しかった!」
「そりゃ人の金だもんな。」
ごろんっとベッドに寝転がりながら余韻に浸っていると、左側からそんな嫌味が聞こえてきて思わず枕を投げつけそうになる。
「でもお昼間に行った商店街の射的は私が出してあげたじゃん。一回で取れないからって何度も挑戦したのは何処の誰だっけ?」
「いや、俺は別にしたくなかったけど。オメェがあのキーホルダー、欲しそうだったから取ってやっただけ。」
チラリ、と横を見ると……ちょうどスマホから目線を外していた大河とバッチリ目が合う。
ベッドの距離は近く、間にサイドテーブルが無い為少し手を伸ばしたら彼の腕に届きそうだった。
「なんだよ、その顔。」
「ッ…いや、別に。」
「お前最近可笑しくね?」
「可笑しいって何が?」
「全部が。すぐに顔赤くなるし、マトモに顔見て話さねえし。まだ頭痛でもしてんの?」
「いやいや、それ本気で言ってる?」
半ば呆れ気味に身体を起こし、聞き返したのは勿論何もおかしくなんて無い私。