神埼探偵事務所
「何だよ、急に起き上がって。」
私の様子に驚いたのか、スマホをサイドテーブルの上に有る充電器にセットしてから大河も身を上げた。
「……あのさあ、ちょっと私酔ってるし」
「この際だから言わせてもらうけど。」
「どこの世界に22年間幼馴染貫いてきた相手にキスされて、何も考えずにポワーンとしてられる女が居るっての?」
「大河からしたら──ッ」
「大河からしたら、あの時のキスなんてお酒とかその場の勢いでしたかもしれないよ。」
「大河ほどイケメンでスタイル良くてお金持ちなら、そんなキス一つに深い意味を持たないのも知ってるよ。」
「でも……」
枕を握っていた腕に力が込められたのが自分でも分かった。
そう…だよね。
どんなに強がってても、大人ぶっていても、私なんて同じ年の女の子達と比べたらまだまだ恋愛経験が少ないただの夢見る夢子ちゃん。
だから、今までの彼氏達にも最終的には面白くないだの重いだの言ってフラれてきたんだと思う。
「私はあの時アンタにキスされてから、アンタを男として意識してしまう自分が嫌だった。」
「だから意識しない様にしてたの。」
ギュッと目を瞑りながら、そんな女子高生みたいな本心を吐き捨てた。
───その、数秒後に慣れ親しんだあの香りが近くに来た事に気付く。……ああ、抱きしめられてるんだ、と理解するまでにそんなに時間はかからなかった。
「ちょ、痛いよ。」