神埼探偵事務所
一番最初に犯行が行われたのは、3月15日。
桜は満開だっただろう。
特にあの並木通りを通って学校に通っていた美咲ちゃんには、桜の花びらはとても身近だったかもしれない。
春と言えば……人は先ず新しい出会いにワクワクする。小学生なら尚更、だ。
次に考えること、それは──ワクワクしたら、何をする?
大人ならお酒を飲んだり、お金を使ってキレイになる努力をしたりする。
子どもなら?
──子どもなら、出来たばかりの友達と楽しく遊び回るだろう。それこそ、先程見た男の子達の様に登下校時に鬼ごっこをするかもしれない。
私と大河の様に隠れんぼをするかもしれない。
「────ッ、そっか!!分かった…分かったよ、大河!」
ギュッと瞑っていた目を開けて、勢いよく大河の方へ顔を向ける。
既に運転モードに切り替わっていた大河も別で何か考え事でもしていたのだろう。先程まで静かだった私の突如なる大きな声に驚いていた。
「…何が分かったんだよ?」
「かくれんぼ、だよ。」
「隠れんぼ?何が?」
「俺たちがした、って事か?」
「違うわよ!犯人は女の子と隠れんぼをしているの!」
「……んなもんしてたら、不審者丸出しだから目撃情報の一つでも「はあ、あんたって本当に比喩とか通じないわよね!」
「なっ、オメェにだけは言われたくねえよ!まず比喩って何だよ、比喩って。」
「だーかーらー!!」
「犯人が『見つける事の出来ない誰か』を探しているのだとしたら?」
「その子に関わる何かが例えば桜関係の物だったとしたら?」
「……それなら、単発の誘拐ではなく連続誘拐として何十年も子ども達を拐っているのが説明着くじゃん。」
「ランドセルを返すのは一種、犯人にしか分からない何かの暗号だとしたら?」
「例えば俺が探してるのはお前じゃない、と。」
「犯人の目当てが桜関係、例えば春に見かけた可愛い女の子、とかだとしたら?」
「それなら────」
「………。それなら、全て納得がいく、か。」
「そう。そうなのよ。」
いつもに増して真剣な表情になった大河。
きっと大河の中でも何かが繋がったんだと思う。
「サクラ、とりあえず今から警視庁に向かう。」
そう一言だけ呟いてからアクセルを全開にした。