神埼探偵事務所
「大河、サクラ。平沢って誰だ?というか、お前達…この男と知り合いなのか?」
先程まで悠長に珈琲を飲んでいたと云うのに、私達2人の態度を見るなり直ぐに何かを感じ取ったのか真面目な顔で、そう尋ねてくる大河パパ。
「知り合いっていうか、まあ言わば元カレ?みたいな。付き合う前にフェードアウトしちゃって、そこから「俺が引き離したんだよ。」
「ちょ、大河…!」
「何だよ?別に悪い事してないし、言った通りアイツは警察庁で暴れる様なサイコ野郎だったし別に俺、言ってマズイ事してねえけど?」
何故平沢君が警察庁に来て発狂したのか、とか…
もっとみんなで突き止めないといけない事が有るはずなのに、目の前の大河はどうやら嬉しそうだった。
大河パパも❝引き離した❞と云うワードで、大方自分の息子が何をしでかしたのか理解出来たのだろう。
苦笑い、といったところだ。
「大体、警察庁であれ警視庁であれ財務省であれ、官公庁内で叫び回す様な奴なんて普通の精神状態じゃないのは明らかなんだし」
「あの時は『平沢くんは凄いロマンティックで良い人なんだよ』とか散々、気持ち悪い顔してニタニタ笑ってたけど、結局……な?離れたのが正解だっただろ?」
「第一お前はそうやってワケ分かんねえ男に惹かれやすいところが問題なんだよ。俺みたいにイケメンでスタイル良くて金持ちで頭良くて…なんて云う詳説の主人公みたいな男が直ぐとなりに居るっていうのに、それを押しのけて──……。」
彼のナルシスト弾丸トークに慣れているのは、この場で私と大河パパのみだろう。
久本さんも幾ら付き合いが長いとは云え、大河がここまでスーパーナルシストで恋愛ベタのオラオラだって事は知らなかったと思う。
その証拠にほら、今もポカーンとしている。