神埼探偵事務所
「……東京の平沢精神病院って、あの何回かテレビに出てた所じゃないの?」
「ああ。アメリカのサイコ映画❝Merry me❞に出てくる病棟のモデルになったとかで、有名な俳優や監督が一回、視察に来てただろ。10年前位に。」
「あっ…!確かにそんな事有ったよね。あの時期、院長の平沢先生も凄いテレビに出てたし。そんな院長の一人息子だったなんて…」
「有名な政治家や芸能人もお忍びで訪れるのは暗黙の了解だからな。そりゃあの達也っていうサイコ野郎も自分の事を金持ちだの何だの言うワケだ。」
達也君は確かに女々しそうな部分も多々有ったし、大河ほど強引な見るからに男って云う感じとは正反対だ。
でも……
だからこそ誰よりも優しいっていうか、お金持ちの息子ならではの余裕が有るっていうか。
それでも大河の言う通り、ここまで名家に生まれてたなんて知らなかったけど。
「平沢院長のお父さんが一代でこの病院を創ったみたいだし、母親は東京都港区の教育委員会委員長だし。バリバリのエリート一家だな。俺ん家ほどじゃないにしても。」
「大河ん所はエリートと云うよりロイヤルでしょ。」
「いやいや、2人とも。そんな事は良いんだよ。肝心の情報は?」
「っ、ああ。忘れてた」
大河と私、神埼家で紅茶でも飲みながら話してるかの様に会話をしている途中に、オイオイと漫画に出てきそうなツッコミを入れた大河パパ。
そうだ、私と大河が彼を調べた理由は…
彼が東京に来たのは私が関係しているのかどうか、そこを知りたかったからだ。