神埼探偵事務所





「……俺がッ…!俺があの時に…!」


聞き慣れた声がして、うっすらと目を開ける。

すると、先程までの映画にでも出てきそうな位にキレイだった桜満開の景色から一転、私の瞳に映るのは真っ白の無機質な天井だった。


「──……サクラ…ッ!!」


視界の隅に、自分に繋がれてある点滴を見つけて此処が病院だと云う事を理解した私。

そして間もなく──今にも泣きそうな顔をしていた大好きな幼馴染に痛いほど、抱きしめられた。



「ちょっ、痛いよ、大河…!」


「しかも大河ママが居るのに…!」


誰が手配してくれたのか、私はどうやら個室でしばらくの間眠っていたみたいだ。

入り口に有る花瓶を見る限り、此処はそれなりの施設で有る事は間違いない。

ウチのお父さんは、しがないタクシー運転手だから多分、焦った大河と……この瞬間を涙を溜めながら見ている大河ママが手配してくれたのかな。


いくら付き合ってると事実を公にしたとは云え、こうやって大河ママの前で思い切り抱きしめられると嬉しさよりも恥ずかしさが先に来る。


「……本当に…ごめん…!」


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