神埼探偵事務所


 
きっと前までの私なら、今なぜこんなに大河が私に謝るのか全く理解していなかっただろう。


でも全てを思い出した今なら……分かる。



「大河……」


「………ッ、どうした?」

グッと形の良い唇を噛み締めている目の前の幼馴染は、きっとあの時に自分が取ってしまった行動を何十年も後悔し続けていたのだろう。



もう、悩まないで。

ハッキリとそう言ってあげようと誓った。





「私ね、全部思い出したの。」


病室に響く私の低い声。

それを聞いた瞬間、病室のドアがガンっと音を鳴らす。



「…え、お父さん?!」


「あ、いや…あの盗み聞きしようとしてたワケでは無いんだけど…その大河の声とか聞いて入るタイミングが無かったっていうか…」


連連と言い訳を重ねるお父さんにも、私の言葉がハッキリと聞こえていたに違いない。

目の前の大河も私が見たこと無いほどに、驚いた顔をしていた。






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