にびいろのなかのひかり 鈍色の中の光

分岐線を照らす光

実家の母から電話が来た


「慧、元気にしてるの？」


「あぁ…別に普通…
みんな元気なの？」


「相変わらず…
慧、
忙しくて帰って来れないのかもしれないけど
今月中に帰ってこれる日ある？」


忙しくしてるのは、そっちだろ



「なんで？
なんかあったの？」



「悟がね、結婚相手連れてくるから
みんなで食事でもしない？」



「え…結婚相手？
悟、結婚すんの？」



「まだ先みたいだけど
同じ病院の女医さんと
お付き合いしてるんですって」



「へー…」



「それでね
悟にあった縁談なんだけど
慧にどぉか…ってお父さんが…
せっかくいただいたお話だし
お断わりするのも…」



「なに？縁談て…
今時、そんなんで結婚相手決める人いんの？」



「お父さんの古くからのお友達のお嬢さん
26歳で慧と同じ年よ
忙しいとなかなか彼女なんてできないだろうし
一度会ってみたら…」



「いや…別にオレ困ってないから…
医者の娘？」



「そうそう…
お嬢さんはピアノの先生やってるんですって
…
慧、困ってないとか言ってるけど
あっという間に年取るんだから…
30前に彼女ぐらい作って…」



「いや、いるから！
心配しなくてもいるから」



「それなら…
同じ病院の人？
同期の研修医とか？看護師とか？」



「いや、お店やってる
料理の…
オレと同じ年で…」



「慧…
とにかく1回会ってみて
それから決めてもいいでしょ」



「何言ってんの？
彼女いるのに会う必要ある？
相手にも失礼だし
1回会って断わるほうがもっと失礼だろ」



「断わるって…
そんなのわからないじゃない」



「いや、会う前からわかる
親の顔に泥塗るのが
だから…」



「もぉ…今度お父さんに説得してもらうわ」



「説得って…
何が違うの？
年だって同じ26歳だし！」



「とにかく、一度帰ってきなさいよ、慧
また連絡するから…」



「そっちだって1回会ってから決めろよ！
オレ、絶対帰んないか…」



ツーツーツー…



切んなよ！

自分の要件だけ言って