降りますか、降りませんか。


「もしもタマキさんがベロベロに酔って。それで甘えてきたら。わたし、そのギャップに。……やられる自信あります」


 って、なに言ってるんだろう。


「じゃあ、オギノさん。カッコわるい俺に落ちてくれる」

「……え?」


 タクシーが、わたしのマンションの前で止まる。


「うち来て飲みなおさない?」

「……タマキさん、の。おうちで?」

「そう」


 わたしがタマキさんの家に行っていいの?

 それもこんな時間にお邪魔しちゃっていいの?

 行けば帰りの電車、ないよ?


「いただきものの地酒があるんだ。かなり美味いらしいんだが、なかなか飲む機会もなくて眠っていてね」


 それは、そそられるというものです。


「金曜日だし。自宅ならハメはずしてもいいかなって俺は考え始めてるんだけど」


 そんなこと、言われたら。


「オギノさん、どう思う?」


 答えなんてひとつしかないじゃないですか。


 ほろ酔いなら、軽く、ハイって言えちゃうんだろうな。


 お酒のせいにして、流されちゃえるんだろうな。
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