君との想い出が風に乗って消えても(長編・旧)



「へ~え、優くん、彼女いるんだ」


「えっと……」


 僕が言いかけたら、それを遮るように……。


「そうなんだよ。草野の彼女、ほら、あそこにいる花咲」


 ……‼


 またまた別の男子の一人が加恋ちゃんの方に指をさした。


「へ~え、あの子……」


 愛美ちゃんが加恋ちゃんの方を見てそう言った。


「かわいい子ね」


 加恋ちゃんのことを見た愛美ちゃんがそう言った。



 ……‼


 ……って、肝心の加恋ちゃんは……。


 僕も加恋ちゃんの方を見た。


 加恋ちゃんは黙って僕たちの方を見ていた。


 か……加恋ちゃん……違うんだ……‼ これは……。


 僕は加恋ちゃんに必死で無言の訴えをした。


 ……ちゃんと伝わったかな……加恋ちゃんに……。





 * * *





 昼休みが終わってから、あっという間に午後の授業も終わった。


 僕は部活をしに行くために教室を出る準備をしていた。


 クラスの生徒たちは帰宅したり部活をしに行ったりして教室はガランとしていた。

 今、教室にいるのは僕と愛美ちゃんの二人だけだった。


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