君との想い出が風に乗って消えても(長編・旧)
すると加恋ちゃんが僕の様子に気付いた。
「どうしたの? 優くん」
やさしく訊いてくれる加恋ちゃん。
「……うん……」
僕は曖昧な返事しかできなかった。
そうしているうちに僕と加恋ちゃんの帰る分かれ道がきた。
「……じゃあ……また明日ね、加恋ちゃん」
僕は、しょんぼりしたまま加恋ちゃんにそう言った。
そして僕は自分の帰る方向へ足を一歩前に出した。
「優くん」
すると加恋ちゃんが僕のことを呼び止めた。
僕は加恋ちゃんの方を振り返った。
「はい、優くん」
加恋ちゃんが僕に渡そうとしていたものはチョコレートだった。
「ごめんね、なかなか渡せる機会がなかったの」
「……加恋ちゃん……」
僕は感動し過ぎてこれ以上、声が出なかった。
「優くん?」
そんな僕の様子に加恋ちゃんは不思議そうな顔をしていた。
僕は、なんとか声を出さなければ……そう思った。
「……ありがとう……加恋ちゃん……」
僕は、やっとのことで声を出した。
そして僕は加恋ちゃんからチョコレートを受け取った。