君との想い出が風に乗って消えても(長編・旧)



 毎年、この一輪の花を見に来ると嬉しくて幸せで元気が出てくるのに……。


 どうして……。


 どうして……こんなにも……。


 こんなにも悲しい気持ちになるの……?


 こんなにも苦しい気持ちになるの……?


 どうして……こんなにも……。


 こんなにも涙が出るの……?


 …………。


 ……何かが……。


 何かが……引っかかっている……?


 ……でも……何が……?


 ……僕は……。


 何かを忘れている……?


 でも何を……?


 何を……。


 ……『大切』……。


 大切なこと……?


 ……何か……大切なこと……。


 とてもとても大切な何かを……。


 でも……何を……?


 どんな大切なことを……?



 僕は、そう思いながら一輪の花を見続けていた。



 ……ねぇ……一輪の花さん……。



 僕は一体何を忘れてしまっているのだろう……?



 でも本当は特に忘れているわけではないのかもしれない。


 ……でも……。


 でも……僕の心の中のどこかで何かが……。


 何かがつかえたような……。


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