君との想い出が風に乗って消えても(長編・旧)



「ダメだよ、病院に行かなくちゃ」


 僕は加恋ちゃんを抱えるように立ち上がろうとした。


「……優くん……ありがとう……本当に大丈夫だから……」


「加恋ちゃん」


「……お願い……優くん……一緒にここにいて……その方が……わたしは元気になれる……から……」


「加恋ちゃん……」


「……お願い……優くん……」


「……わかった……だけど、これ以上ひどくなりそうなら病院のことも考えないと……」


「……うん……ありがとう……優くん……」


「加恋ちゃん、僕、ちょっと水買ってくるから、そのまま座っていられそう?」


「……うん……」


「すぐ戻って来るから」


 僕は木陰に加恋ちゃんを座らせて、そのまま水を買いに行った。





 水を買って木陰にいる加恋ちゃんのところに戻ってきた、僕。


「加恋ちゃん、お待たせ」


 僕は加恋ちゃんの隣に座り、水が入ったペットボトルのふたを開けた。


「加恋ちゃん、水だよ」


 僕は加恋ちゃんに水が入ったペットボトルを渡そうとした。

 だけど加恋ちゃんは手に力が入らず、ペットボトルを持つことができなかった。


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